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「金をもうけたらこんな船ら、どっさり買うよ、俺」よしかずは甲板に頬をつけ、目を閉じた。
大きな甲板だった。船は燃えるように熱い。なにもかも熱のさなかにある。
なかば水に浮き、なかば陸に乗り上げている船だった。船が燃え上がり、その船にへばりついた俺らが炎のように燃えていた。夢はなにもない。昔のことも、将来の事も考えない。炎はただ燃えている。

- 作者: 中上健次
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1980/01
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