やっぱり俺はこの子の事が好きなのだ

妻との出会いから子育てまで

一人の家、備える

妻が出産に備え入院をした。誘発分娩で明日あたり出産予定。

「できれば出産前は不安なので来て欲しい」

まぁその、普通のテンションで、当たり前の事を妻に言われただけなのだけど、ちょっとしたヒーロー気分でよろしくタクシー飛ばして会社帰りに面会にいった。

「お客さん通院?元気そうだから違うか」

事情を話し面会時間ぎりぎりだという旨を伝えると、子育てについて、民主党の悪口、をべらんめ調で話しながら、黄信号を無視したりして急いでくれた。
よく考えてみると、具体的に何ができるわけではないのに必要とされる事っていうのは俺の人生にはなかなかない事だなぁと思った(これは感傷に浸るというよりも事実認識として)
また、これは非常にむずがゆいことだと思う。

面会終了15分前着。エレベーターで病棟をあがる。
部屋番号がやたら大きくて、慌てるな俺と言う。
一周ぐるっと回って、ようやく間違いを認めてナース室の人に聞くと

産婦人科はあっちですよ」

と笑顔で正しい場所を教えてくれた。
なんというか、大げさな話、タクシーの運ちゃんの親切さという流れもあってか、この時俺はちょっとだけ感動してたかもしれない。すべての世の中はこうあるべきだ、多くの人に笑顔で送迎され光り射す方へ導かれるべきなのは妊婦の旦那だけではあるまいに、と。

嫁は同室の妊婦とわきあいあいあいとやっていた。
ヒーロらしい会話もいっさいせず、明日の実際的な話を確認して、
「日中仕事を抜けるわけには…」
とかゴニョゴニョ話をしてきた。
で、嫁の実家で報告がてらご飯を頂いて、家に帰ってきた。


それでいま家に一人。
タバコを部屋の中で吸っている。
ベランダで吸うのは寒くて億劫だったので、これはいいやと初めは思ったのだけど、手軽に吸える分、馬鹿みたいに吸ってしまい気持ち悪い。
こうして久しぶりに一人になってみると、嫁が時計代わりになっていたことに気づいた。
嫁が風呂へ入ったら「ああもうそんな時間かぁ」みたいな。
いなくなってみてから初めて気づいたシリーズなんだけれども、嫁は正確にはいなくなったわけではないので、まぁそういう寂しくなるような事を考えるのはこんくらいで辞めとく。


じゃ。